すずめ書店

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ノンタンの絵本は教育に悪いのか真剣に考察しました

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 こんにちは、すずめです。昔からノンタンの絵本が好きで、ノンタンシリーズ徹底解説の記事やノンタン全作品のあらすじ紹介記事などを書いています。特に徹底解説記事は書き尽くすくらいにたっぷりの情報を書いたのですが、それでも書き足りなかったのが「ノンタンは教育に悪い」という意見についての考察です。

 そこで、ノンタンの絵本が本当に教育に良くないのかを真剣に考察し、本記事にまとめることにしました。どんな点が「良くない」と言われる原因か、どのようにすれば学びにつながるのかなどについても触れています。ノンタン好きな方はぜひお読みください。

こんな人向けの記事

ノンタンの絵本を読み、教育に悪いのではないかと心配になった

ノンタンのどこが教育に悪いと言われているのか知りたい

 

はじめに

 わたし自身はノンタンの絵本が大好きで、妹や弟が小さい頃にはしょっちゅう読み聞かせをしていました。もちろんノンタンが大好きです。ただ、大人になって改めて読んでみると「この表現って大丈夫なのかな」「真似しちゃう子はいないのかな」と心配になる箇所もあることに気付きました。

 さらに、ノンタンについて検索しようとすると、サジェストに「教育に悪い」という言葉が出てくることに気付きました。そこでようやく、ノンタンを読み聞かせるのはよくないのではないかと感じている方がたくさんいることを知ったのです。

 本記事は、「ノンタンの絵本は教育に良くないから読むな!」と決めつけるものではありません。どのような描写がそう言われてしまう原因なのか、本当に教育に悪いのかなどを真剣に考察したものです。

 「ノンタンは好きだけれど、子どもに悪い影響を与えないか心配」など、読み聞かせに不安を感じている方に読んでいただければ幸いです。

ノンタンの絵本が教育に悪いと言われる理由は?

あかんべノンタン (ノンタン あそぼうよ3)

そもそも、ノンタンのどこが「教育に悪い」のでしょうか。絵本を読み返して、わたしなりに考えてみました。

自由奔放で自分勝手な行動が多い

 理由としてまず挙がるのが、ノンタンの自由奔放で自分勝手なふるまいです。ノンタンはいい意味で子どもらしく描かれているのですが、ときどき度をすぎて「それを子どもが真似したら困る」という行動をすることがあります。

 ただ、ほとんどの物語でそれ相応の報いを受けています。たとえば「あかんべノンタン」では、誰彼かまわずあかんべをしていたら太陽に仕返しされます。また、眠くないからといって夜遅くに遊びに出かけた「ノンタンおやすみなさい」では、暗闇で遊んだせいで泥まみれになりました。

 自分勝手なことをして報いを受けるのは、子ども向けの絵本やアニメなどではよくあるパターンです(ドラえもんもそうですね)。そのため自己中心的な行動をする点に関しては、あまり目くじらを立てることではないのかな……とも思います。

妹に悪意を持って意地悪する

 個人的に一番気になっているのが、妹のタータンに意地悪をしている点です。タータンに対して「こっちくんな」と足蹴にしたり、わざと置いて行ったりと、けっこうな意地悪をしています。そして、あまり反省せずに終わることも多々あります。

 何よりも気になるのが、ノンタンの言動に悪意があるところなんですよね。兄は妹にあれこれ命令し、遊んでほしい妹は素直にいうことを聞く。兄は妹がいない方がのびのび遊べるから、なんとかして撒こうとする。

 妹に対するノンタンの行動がリアルすぎて、妹のいる男の子が読んだら真似しちゃうんじゃないかな……と思います。共感もしてしまいそう。難しいですね。

タータンの裏設定を知ると余計に……

 でもまあ、それだけならギリギリ許容範囲のような気がします。わたしがどうしても気になってしまうのは、タータンの裏設定を知っているからこそかもしれません。

 以前ノンタンシリーズ徹底解説の記事を書いたときにも触れましたが、タータンは耳が聞こえないという裏設定があります。これは無料配布冊子「まるごとノンタンブック」に書かれていたので、推測ではなく事実です。

 おそらくノンタンも幼いので、タータンの音のない世界が想像できないんですよね。それで妹に意地悪をしてしまうのだろうなとは思います。でも、耳が聞こえない小さな女の子が兄に置き去りにされて困っている描写をみると、つい辛くなります……。

サプライズのために友達を仲間はずれにする描写

 ほかに気になることとして、ノンタンの友達の行動も挙げられます。「ノンタンのたんじょうび」はノンタンのお誕生日をみんながサプライズでお祝いしてくれるお話なのですが、パーティまでの過程でちょっとモヤっとする描写があります。

 主役のノンタンにバレたくないと思ったみんなは、ノンタンに「なにもってるの?」「なにするの?」と聞かれても「ノンタンにはないしょ!」と仲間はずれにします。そしてノンタンははいっちゃだめ!」と家からしめだしてしまいます

 どうしても気になるノンタンは窓から中を覗こうとしますが、それに気付いたみんなはひと足早く窓から飛び出し、あかんべをしてノンタンを追い返します。ノンタン泣きながら立ち去り、ひとりぼっちで「つまんないの……」と落ち込んでしまいます。

 サプライズで喜ばせたい気持ちが先行した結果いじわるをしてしまう、少し矛盾しているこのような状態って、子どもだとすごくあるんですよね。

 でもこの絵本ではそれをたしなめているわけでもなく、実は誕生日パーティーでした!わーい!で終わってしまうんです。相手を喜ばせるためならそれまでの過程でどんなことをしてもいいのか?と、ちょっぴりもやもやした1冊でした。

ノンタンの絵本はどんな役割を果たすのか

ノンタンいもうといいな (ノンタン あそぼうよ16) 

ここからは、上記のような行動が子どもにどんな影響を与え、どんな役割を果たすのかを考えてみたいと思います。

子どものかわりに痛いめにあう反面教師的な役割

 上記で述べたとおり、ノンタンは自分勝手な行動をした結果、痛い目にあっていることがほとんどです。悪いことをするとそれ相応の報いが返ってくるのを見た子どもたちは、「こういう行動はやめるべきなんだ」と学びます

 つまりノンタンは、悪い見本、反面教師としての役割を果たしてくれる面もあるということです。

子どもといっしょに成長する仲間としての役割も

 とはいえ、わたしはあまりノンタンに反面教師的な役割を押し付けたくないと思ってしまいます。それは、ノンタンが幼い子どもを見事に反映させたキャラクターだからです。ノンタンの行動は子どもの行動そのもので、まだ成長過程にあるのだと思います。

 子どもたちは理想の行動を知っていながらも、理性でそれをおさえられずわがままを言ったりいじわるをしたりしてしまいます。だからこそ、自分と似たような行動をしているノンタンを見て、無意識のうちに共感するのではないでしょうか。

 共感しているノンタンが反省して心を入れ替えることで、自分の行動も見直し反省できるようになります。ノンタンが絵本の中で成長し、読んでいる子どももいっしょに成長する。そんな存在であってくれたらいいなと思います。

結論:ノンタンが教育に悪いわけではない、が……

ノンタンおやすみなさい (ノンタン あそぼうよ2)

ここまで考察してわたしの出した結論は、「ノンタンが教育に悪いわけではない」というものです。しかしその一方で、「読み方によっては良くない教育につながる可能性もある」点は述べておきたいと思います。

読み方によっては教育によくない場合も?

 ノンタンの絵本は子どもの行動をとてもリアルに描いており、真似してほしくない言動もたくさん見られます。もちろん最終的には理想とされる行動をしているケースが多いのですが、幼い子は真似するべき点と真似してはいけない点の区別がつきづらいのが困ったところです。

 そのため、ノンタンのよくない言動を真似する子がいてもちっともおかしくありません。そうならないためには、絵本を読むだけでなく振り返りや絵本から発展させた会話をし、ノンタンの行動の良し悪しを気付かせてあげるのが大切です。

間違った受け取り方を正してあげることも重要 

 また、子どもは物語を部分的に受け取ってしまうことがよくあります。たとえば「ブランコのせて」ではノンタンがブランコを独り占めしますが、最終的にはみんなで数を数えて交代しながら遊ぶことを身につけます。しかし幼いとその結末を考慮せず、「ノンタンもやってたから」とブランコの独り占めだけを真似してしまうのです。

 でもそれは、ノンタンの絵本が悪いわけではありません。ノンタンに限らず、他の絵本でも同じようなことは起こります。そもそもそれを避けようと思ったら、出来すぎたいい子ちゃんしか出てこない絵本ばかりになってしまいます。

 大切なのは、間違った受け取り方をしていたらそれを正してあげることなのです。ノンタンに限らず、絵本を軸にしたコミュニケーションを大切にして、そこから学べることを学んでいけるといいですよね。

さいごに

 大人になってからノンタンを読むと、ノンタンが子どもの言動をとてもリアルに描いていることに気付きます。そして、「だからわたしは小さい頃、ノンタンが好きだったんだな」と発見しました。

 目に余る行動が多く、「教育に良くないのでは?」と思ってしまいがちなノンタンですが、そのふるまいは子どもそのもの。そこから学べることがたくさんあるはずです。ぜひ子どもとのコミュニケーションを大切にし、ノンタンと共に成長していけるよう導いてあげてください。