こんにちは、すずめです。以前、「こんなこいるかな」について徹底解説する記事を書いたのですが、「こんなこいるかな 発達障害」で検索して記事にたどり着く方がとても多いことに気が付きました。
先述の記事では「確かに似ているところはあるが発達障害と決めてしまうのは少し早い」という内容を書きました。しかしこれほどたくさんの方が同じようなことを考えているのであれば、もっとしっかり考察してもいいのでは?と思いました。
そこで今回は、こんなこいるかなのキャラクターたちと発達障害の関係性について真剣に考察していきます。ただしあくまで考察であり、実際に発達障害であると判断するにはたくさんの情報や診察が必要であることをご理解ください。
はじめに
ここからは、読んでいる方がこんなこいるかなについて知っている前提でお話をします。もし曖昧なところがあるようでしたら、こんなこいるかなについて徹底解説した以前の記事を参照してください。
また、この記事はこんなこいるかなのキャラクターが発達障害であると決めつけることを目的にしていません。関係性について客観的に特性を比較し、考察することそのものが目的です。
この記事を参考に、発達障害で悩んでいる子が自分と同じ特性を持つキャラクターを見つけ、「こんなこもいていいんだ」と自分を好きになってくれたらいいなと思っています。
そもそも発達障害って?
発達障害は、脳の発達が偏ってしまうことで生じる障害です。ADHD、ASD、LDなどが有名です。それぞれ簡単に説明していきますので、よくわかっていないという方はさらっと読んでおくとわかりやすいかと思います。
ADHD(注意欠如・多動性障害)
・注意力の欠陥(注意力や集中力がない)
・多動性(じっとしていられない)
・衝動性(突発的に行動してしまう)
上記のような症状があるとADHDと診断されることがあります。3つのうちのどの症状が優位に現れるかは人によって異なりますが、中には全て同程度に出る場合もあります。
ASD(自閉症スペクトラム障害)
・相手の気持ちを読み取るのが苦手
・こだわりが強い
・聴覚や視覚が過敏
上記のような特性を持っていると、ASDと診断される可能性があります。ただしASDは自閉症やアスペルガー症候群など複数のものを合わせていう名前なので、人によって症状や特性にもかなり幅があります。
LD(学習障害)
・文章をスムーズに読めない
・文字がマスからはみだす
・数の把握が苦手
全体的な知的発達に遅れがないにもかかわらず、上記のように特定の学習だけが苦手な場合は、LDに該当することがあります。他にも、字が認識できない・計算ができないなどさまざまなケースがあります。
その他
吃音(話すときにどもる)、チック(突発的な体の動きや発声)なども発達障害に含まれることがあります。詳しくは以下の参考資料をご覧ください。
発達障害とは?種類・症状・進路・発達支援の重要性について |LITALICOジュニア
発達障害の特性に近いと思われるキャラクター
ここからは、発達障害の特性とキャラクターの特性を比較・考察していきます。ただし、あくまで個人の見解でしかありません。こんな見方もあるんだ、というスタンスで読んでください。
いやだいやだのやだもん
やだもんは、なんでも「いやだ」とわがままを言う、自分勝手なキャラとして描かれています。わがままと捉えられやすい発達障害に、ADHDとASDがあります。
「こうしたい」と思ったら突発的にその行動をしてしまうのは、ADHDの衝動性によくあるケースです。また、ASDで相手の気持ちが考えられず、そもそも自分勝手だということに気づいていないということもありえます。
絵本では、わがままを言うやだもんに対してぺろとみゃーが優しく接するシーンがあります。その優しさに、「また、こうえんであそぼうね」と言われたやだもんは素直に「うん、あそぼうね」と答えます。わがままと思われがちで悩んでいる子が読むと、前向きな気持ちになれるかもしれません。
こわがりやのぶるる
ぶるるは、おばけや暗い場所などをとても怖がります。怖がりという特性を持つ発達障害に、ASDがあります。
ASDの特性に、見通しが立たないと不安になる、いつもと違う場所や状態にパニックになるというものがあります。また、自閉症の傾向が強いと特定のものを極端に怖がることもあります。ぶるるの様子を見る限りでは、こちらに近いかもしれません。
絵本のぶるるは最終的に、自分にとっての安心できる場所を見つけてそこで眠ります。安心できる場所を用意してあげるのは、怖がりな子への対応としても理想のものです。
いたずらっこのたずら
たずらはいたずら好きで、他人に迷惑をかけて楽しんでいます。これはすごく微妙なラインです。相手が嫌がっているのに気付かないのなら、相手の気持ちがわからないASDに近くなります。でも、たずらの場合は嫌がっているのをわかった上で喜んでいます。
相手が困るのを見て心から喜んでいるなら、倫理観に欠けるサイコパスに近くなります。サイコパスは発達障害ではなく、精神病質という分類です。しかし、幼さゆえにおふざけが度をこしているのであれば、やはりASD寄りになるかと思います。
ただし、絵本の中でたずらがしているいたずらは、作り物の蝶でびっくりさせるというかわいいものです。あえて発達障害の特性に近いものを挙げるならということでASDと書きましたが、正直たずらはただのいたずらっこかな……とも思っています。
わすれんぼうのぽっけ
ぽっけは、物の場所やお使いの内容など、なんでもすぐに忘れてしまいます。忘れっぽさはADHDとASDのどちらにもみられる症状ですが、それぞれ原因が異なります。
ADHDの場合、注意力が欠けることで大切なことが頭から抜け落ちてしまうなどのケースがあります。一方でASDの場合は、こだわりの強さからひとつのことに夢中になっていたために忘れてしまうという、ADHDと真逆の理由で物忘れが起こります。
絵本では、お使いの内容を忘れたぽっけにぺろが「りんごは2こでしょ」と教えてあげています。忘れっぽい子へのあたたかい接し方が描かれているのが素敵だなと思います。
ちらかしやのぽいっと
ぽいっとは片付けが苦手で、そこらじゅうに物を散らかしてしまうキャラです。整理整頓が苦手なのは、集中力が持続しにくいADHDに多い特性です。また、ADHDは優先順位をつけるのが苦手なため、それも原因のひとつである可能性があります。
他にも、「どれも大切で捨てられない」と思ってしまう強迫性貯蔵症というものもあります。ゴミ屋敷にしてしまう方はこれに該当するかもしれません。ぽいっとは掃除が嫌いではない様子がアニメで描写されているため、ADHDに近そうです。
絵本の最後では、きちんと片付けをしたことで探していた物を見つけられます。こういう子は、ぺろのようにいっしょに片付けたりアドバイスしたりしてくれる子がいると助かるんですよね。
わらいんぼうのげらら
げららは笑い上戸で、空気を読まずに大笑いする姿が描かれています。たくさん笑うこと自体は全く問題ないのですが、静かにしなければいけない場面や相手が嫌がる状況でも大笑いしているのであれば、空気を読むのが苦手なASDかもしれません。
関係ありませんが、げららはちびまる子ちゃんに出てくる山田くんに似ていますよね。彼も「もしかして発達障害なのでは?」と感じている方が多いようです。
げららは絵本の中で、大きな笑い声で木に引っかかったバドミントンの羽根を落とすことに成功します。とはいえ本人は、自分のしたことに気付いていなそうです。状況を選ぶ必要はありますが、笑うってやっぱりいいことですよね。
結局キャラクターは発達障害と関係あるの?
作者の方に聞いてみないと実際のところはわかりませんが、わたし個人の考えとしては、こんなこいるかなのキャラクターは発達障害のつもりで書かれたのではないのではないかと思います。
発達障害という診断がされなくても、片付けが苦手な方や忘れっぽい方はたくさんいますよね。だから、アニメを観る人や絵本を読む人にとって、「こんなこいるかな」のキャラクターの性格は共感できる「あるある」なのです。
しかし、子どもがわかりやすいようなキャラクターを作ろうと思うと、そんな性格を誇張する必要が出てきます。するとどうしてもその特性が強調され、発達障害と診断されるラインになってしまうのかもしれません。
発達障害の子に読んであげるのはあり?
こんなこいるかなの絵本を、同じような特性を持つ子に読んであげるのはありなのでしょうか。これも個人の意見となってしまいますが、わたしはありだと思います。ただし、読む側が意図を持っておく必要があるとも思います。
読んであげるときは、まず事前に絵本を読み内容を知っておきましょう。絵本の展開はさまざまですが、キャラクターが痛い目にあうパターンと周りの支えに助けられるパターンがあります。
痛い目にあうパターンの場合は「どうしたらよかったんだろう?」と考える教材として読むといいと思います。自分自身が渦中にいるときは想像できないことも、キャラクターを通すと客観的に考えられることが多いです。
一方、周りの支えに助けられるパターンなら、「みんなが助けてくれるね」と安心させる材料として読むのがいいかもしれません。また、友達や兄弟などにも読み聞かせると、その子に対する理想的な接し方に触れてもらえます。
さいごに
こんなこいるかなのキャラクターと発達障害の関係を考察したところ、「ひょっとすると発達障害に近いかも?」と思えるキャラが6人いました。しかしこれはあくまでわたしの見解で、見る人によっては「これは発達障害とは言えない」と思うかもしれません。
今回の考察はあくまで客観的に症状とキャラクターを見比べただけであり、実際に発達障害であると判断するにはもっとたくさんの情報や診察が必要です。だから、キャラクターに似た子がいてもイコール発達障害ではありません。その点をご了承いただけると幸いです。
発達障害は本当にさまざまな特性があります。しかし、小学校でいろんな子を見てきたわたしからすると、どれもその子の個性です。怖がりな子は慎重でミスをあまりしない子でしたし、空気を読むのが苦手な子は明るくてみんなの人気者でした。
発達障害の型を知っておくのはとても大切ですし、診断で気持ちが楽になることもあります。ただ、大切なのは「この子はADHDだから」「ASDだから」と型にはめることではありません。その子が生活しやすいようにサポートするための手段として、特性を知ってあげることです。