すずめ書店

本で心を豊かにしたい、どこかの町のすみにある小さな本屋さん。

著作権に違反していないYouTubeの読み聞かせ動画をご紹介!

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 こんにちは、すずめです。絵本を読み聞かせるのが大変なとき、誰か代わりに読んでくれたらな……と思うことがあります。YouTubeには読み聞かせ動画が大量にあがっていますが、あれ、ほとんどが違法なんですよね。

 そこで本記事では、著作権に違反しておらず安心して子どもに見せられる読み聞かせ動画をご紹介します。また、どんな読み聞かせ動画が著作権違反かも解説しますので、なんとなく絵本読み聞かせ動画を見てしまっている方に読んでいただけると幸いです。

こんな人向けの記事

YouTubeを使い子どもに安心な読み聞かせ動画を見せたい

・どんな読み聞かせ動画が著作権違反か知りたい

 

YouTubeの絵本読み聞かせ動画は著作権侵害

STOPのブロックが置かれている写真

YouTubeでは、「絵本のタイトル+読み聞かせ」で検索すると一般の方が読み聞かせをしている動画がたくさん表示されます。しかし、そのほとんど全てが著作権に違反しています。

そもそも著作権侵害って?

 絵や文章、写真、映像作品など、あらゆる創作物は著作権で保護されます。そのため、他人の著作物を作者の許可を得ずに無断で使用するのは、著作権侵害になります。著作権侵害には以下のような事例があります。

・他人が描いた絵で勝手にグッズを作り販売する。

・ネット上の文章をコピペして自分の制作物として発表する。

・映画や音楽を違法にアップロードする。(ダウンロードも犯罪)

・絵本の読み聞かせ動画をアップロードする。

公衆送信権の侵害にあたるためオンライン読み聞かせもNG

 他人の著作物を勝手にアップロードすると、公衆送信権を侵害しているとみなされます。少し難しいのですが、不特定多数の人が受信できる状態で、他人の著作物を送信するのがNGと考えてください。

 YouTubeに読み聞かせ動画を送信(アップロード)すると、他人の著作物(絵本)を誰もが受信(視聴)できる状態にしていることになりますよね。それでは誰もが絵本を買わずに楽しめてしまうので、規制されるのです。

 また、オンライン読み聞かせ会などもこれに当てはまるため、公衆送信権の侵害に含まれます。ただし出版社や作者に許可を得ていればなんの問題もないので、どうしても行いたいときは問い合わせしてみることをおすすめします。

違法読み聞かせ動画をアップしているのはどんな人?

読み聞かせ動画をアップしているのはどんな人なのでしょうか。大きく分けると2通りのパターンがあるようです。

人気の絵本を読んで登録者を増やしたい・収益化したい人

 著作権違反であることを知っていながら読み聞かせ動画をあげている人もいます。人気の絵本は需要があるため、再生回数やチャンネル登録者数が増えやすいようです。登録者を増やして収益化し、そこから収入を得ることを狙っているパターンです。

 このような人の動画がたくさん再生されると、絵本を作ったわけでもない人にお金が入ります。そしてさらに収入を得るために違う絵本の読み聞かせをし、YouTube著作権違反の動画があふれるという、悪循環が生まれます。

子どもたちのために純粋な善意であげている人

 読み聞かせ動画で収益をあげようと思っている人は少数で、ほとんどが悪意のないアップロードだといわれています。コロナ禍になってから、読み聞かせ動画の数は増えたといいます。「家の中の時間も楽しんでほしい」という純粋な善意なのだと思います。

 中には、著作権違反であることを知らないで動画を作っている人もいるかもしれません。しかし、法律は「知りませんでした」では許されません

 著作権に違反した動画を見て過ごした子どもたちは、読み聞かせを動画サイトにアップロードすることを悪いことだと思わずに成長します。誤った情報モラルを身につけさせることは、本当に「子どもたちのため」になるのでしょうか

どんな事情があろうとルール違反

 違反であるのを知っていながらアップロードするのはもちろん悪いことですが、悪いことだと知らず善意のつもりで読み聞かせ動画をあげている人も罪の重さは同じです。どんな事情があれど、他人の著作物を公共に向けて送信してはいけません。

 また、「これって著作権違反なんだろうな」とわかりながらも動画を再生しているのだとしたら、すぐにやめましょう。読み聞かせ動画を再生する人がいるから、アップロードする人がいるのです。

出版社が対応している事例も

読み聞かせ動画は多く蔓延っていますが、対応がされづらく放置されているものが多いのが現状です。そんな中、出版社が削除を求める対応をしているケースもあります。

ブロンズ社は「だるまさんが」の違法動画を削除申請

 「だるまさんが」シリーズでおなじみのブランズ社は、3年間で1000件以上の動画の削除依頼をおこなっているとのことです。詳細は以下のページをご覧ください。

コロナ禍で急増「絵本読み聞かせ動画」“善意”のアップロードでも逮捕の可能性 | 弁護士JPニュース

 なおこの記事によると、ファスト映画の件で逮捕者が出たのと同様に、今後は読み聞かせ動画から逮捕者が出る可能性もあるとのことです。

なぜ著作権違反の読み聞かせ動画を見ちゃだめ?

はてなマークのブロックが3つ並んでいる写真

読み聞かせ動画をアップロードするのは著作権に違反するためNGだということはおわかりいただけたかと思います。では、視聴者側が視聴してはいけない理由はなんでしょうか。

悪循環を生み出す

 違法にアップロードされた動画を視聴すると再生回数が増えます。すると投稿者側は「読み聞かせ動画は需要があるからもっと作ろう」と思います。その思いの根底にあるのが「儲かる」なのか「人の役に立てている」なのかは人によりますが、どちらにしても次の動画を作るきっかけになってしまいます。

 一方で、誰も動画を再生しなければ「また次の動画を作ろう」とは思いませんよね。そのため、著作権違反をしている動画を視聴しないことが重要になるのです。

子どもたちに情報モラルが身につかない

 インターネットが当たり前の社会となり、子どもたちには一層情報モラルを身につけていることが求められます。しかし、著作権違反の動画を見ていた子どもたちは、それが悪いことだと知らないまま育ちます。

 そのうち学校などで著作権について学びますが、当たり前のように違法動画を見ていた子どもの中には「悪いのはわかったけどみんなやってるし」と開き直ってしまう子も出てくるのではないでしょうか。

絵本業界が衰退する可能性も

 YouTubeの動画で絵本が読めるとなれば、本屋で売れるかもしれなかった絵本が売れなくなります。すると売り上げが低い絵本作家の新刊が出なくなる可能性や、出版しても売れないからと絵本事業が縮小される可能性が出てきます。

 本当に子どものことを思うなら、絵本をきちんと購入して売り上げに貢献し、絵本業界の未来を作っていかなければならないとわたしは思います。

どんな動画は著作権違法じゃない?

くまのぬいぐるみが本を読んでいる写真

ではYouTubeの読み聞かせ動画はどれもアウトなのかといえば、実はそんなことはありません。著作権に違反せず読み聞かせをしている動画もあります。

著作権をクリアしている絵本を読んだ動画はOK

絵も文も自分で作ったオリジナル絵本の動画

 NGなのは他人の著作物を許可なく発信することなので、自分で作った絵本を読み聞かせするのならなんの問題もありません。オリジナル絵本の動画をアップしている方の読み聞かせは視聴しても大丈夫です。

絵も文も著作権フリーのものを使った動画(青空文庫+フリー素材など)

やまなし (日本の童話名作選)

 著作権は保護期間が決められており、著作者の死後70年とされています。ネット上で読める「青空文庫」が無料なのは、著作権が切れた作品を集めているからです。そういった作品を読み聞かせるのは著作権に違反しません。

 たとえば1933年に亡くなった宮沢賢治著作権が失効しており、読み聞かせ動画を使っても問題ないのです。しかし、読み聞かせに上の画像の絵本を使うのはアウトです。理由は、この絵本の絵を担当された遠山繁年はまだご存命で、著作権が失効していないからです。

 読み聞かせに使うのであれば、文章も絵も著作権をクリアしなければなりません。青空文庫の作品を絵本を映さずに読み聞かせする、あるいはフリー素材などを使って自分で作った動画と共に読み聞かせするのならOKです。

国会図書館で公開されている著作権切れ絵本を読んだ動画

著作権が切れた絵本のページを写した画像

 古い絵本の中には、文章も絵も著作権が切れているものがあります。そういったものなら、絵本を映しながら読み聞かせをしてもなんの問題もありません。

 国会図書館デジタルコレクションというサービスでは、絵も文も著作権が切れた本をネットで閲覧できます。その中には上の画像のような絵本もあり、読み聞かせに使用可能です。

 古いものが多いため、現代の子どもには受け入れにくいかもしれませんが、このような絵本の読み聞かせ動画はOKであることは覚えておくといいですよ。

国立国会図書館デジタルコレクション

出版社が公式であげている読み聞かせ動画もある!

 一般の人が作った読み聞かせ動画でOKなのは上記3つのパターンなので、新しい絵本の読み聞かせをYouTubeで視聴するのはほぼ無理だということがわかったかと思います。

 しかし、出版社が作成し公開している読み聞かせ動画なら、人気の絵本を読めるものもあります。出版社はきちんと作者に許可を取り、出版社にきちんと利があるように動画を作っています。そのような動画を再生するのは出版社の応援に繋がります

 もし人気の絵本や新しめの絵本の読み聞かせ動画が視聴したいなら、出版社がアップロードしているものにしましょう。

著作権に違反していない読み聞かせ動画をご紹介

ここからは、著作権に違反せず視聴できる読み聞かせ動画をご紹介していきます。各出版社のおすすめの動画を1〜2個掲載しますので、気に入ったチャンネルがあれば投稿動画一覧からチェックしてみてください。

フレーベル館の「べるくまのえほん読み聞かせパーク」

 フレーベル館が運営しているYouTubeチャンネルは、複数の読み聞かせ動画を1本にまとめた詰め合わせ動画があるのがポイントです。 

赤ちゃん向け絵本詰め合わせ動画

 以下7冊の赤ちゃん向け絵本が収録されています。

はいチーズ!(作/絵・きしらまゆこ 2016年)

おまつりおばけ(作・くろだかおる 絵・せなけいこ 2012年)

たまごのうた(絵・市原淳 2017年)

とんぱんぎゅっ!(作/絵・100%ORANGE 2017年)

ぱくぱく はーい!(作/絵・あかいしゆみ 2017年)

まほうのカメラ(作/絵・木曽秀夫 2012年)

おへんじしてね(作・中村徹 絵・せべまさゆき 2016年)

www.youtube.com

 2本目の動画では、以下6冊の赤ちゃん向け絵本が収録されています。

もくもくふわふわ にじいろロディ(作/絵・かしわらあきお 2019年)

しっぽ.しっぽ.しっぽっぽ(作/絵・木曽秀夫 2011年)

やさいの うた(絵・田代 卓 2017年)

はやおきおばけ(作・くろだかおる 絵・せなけいこ 2010年)

おにの パンツ(絵・長谷川義史 2018年)

ぶたさんたいそう(作/絵・くわざわゆうこ 2014年)

www.youtube.com

偕成社の「おはなしのへやオンライン」

 偕成社の読み聞かせ動画は、作者本人が読んでいるのが最大の特徴です。中には作者からのメッセージが入っているものもあり、大人が見ても楽しめそうです。 

てをつなぐのだいすき

てをつなぐのだいすき(作/絵・きむらゆういち 2022年)

www.youtube.com

講談社の「えほんチャンネル」

 講談社YouTubeでは、昔話の読み聞かせ動画を視聴できます。 

おむすびころりん

おむすびころりん(絵・真珠まりこ 文・令丈ヒロ子 2018年)

www.youtube.com

worksKOBEの公式チャンネル

 worksKOBEのYouTubeにはそこまでたくさんの動画がありませんが、ある程度大きくなった子も楽しめる読み聞かせがあります。 

赤ずきんちゃん

あかずきんちゃん(作/絵・カトウシンジ 2018年)

www.youtube.com

SBS(静岡放送)の「おうちDE絵本」

 静岡のテレビ局SBSのYouTubeでは、アナウンサーによる絵本の読み聞かせ動画が視聴できます。 

ころりん・ぱ!

ころりん・ぱ!(著・ひらぎみつえ 2019年)

www.youtube.com

飛鳥新社の公式チャンネル

 眠れる本として話題になった「おやすみロジャー」を、男女1人ずつの声優が読み聞かせした動画があります。男性は中村悠一さん、女性は水樹奈々さんが担当しています。

おやすみロジャー

おやすみ、ロジャー(著・カール=ヨハン・エリーン 2015年)

www.youtube.com

www.youtube.com

大人向けの小説読み聞かせはAudibleがおすすめ

 子ども向けの絵本は出版社による読み聞かせ動画が豊富ですが、小説など大人向けの本の読み聞かせ動画はほとんどありません。そこでおすすめなのが、AmazonのAudibleです。

 Audibleは会員制の読み聞かせサービスです。聴き放題なのが特徴で、大人向けの小説を耳で聞きながら楽しめます。寝る前に聴いたり、車や電車などで通勤・通学するときに聴いたりするのにぴったりです。

 月額1500円なのですが、初月無料で途中退会も可能なため、小説の読み聞かせ動画を探している方は一度登録してみるのもおすすめです。

さいごに

 絵本の読み聞かせが大切なのはわかっていても、忙しい・疲れているなどの理由で読み聞かせできないこともたくさんあります。記事で紹介した動画が、そんな方の手助けになると幸いです。

 また、出版社・作者の許可を得て公開されている絵本の読み聞かせ動画は、記事で紹介した以外にもたくさんあります。ぜひ自分でも探してみてくださいね。