すずめ書店

本で心を豊かにしたい、どこかの町のすみにある小さな本屋さん。

定番絵本いないいないばあの「怖い」と「人気」が両立する理由を考察しました

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 こんにちは、すずめです。日本で最も売れている絵本って、松谷みよ子の「いないいないばあ」なんですよね。わたし自身が小さいときには家になかったので、娘が生まれて初めて購入したのですが……表紙を見た時点で思ったのが、「え、これ怖い」

 みんな怖いと思ってるんじゃないの?と思いすぐネットで「いないいないばあ 怖い」で検索したのですが、「怖いと感じる方もいるようです」といった書き方が多く、本当に怖いと感じている方の記事は見当たりませんでした

 そこで今回は、実際に怖いと感じた筆者が、「怖い」と「人気」が両立する理由について考察していきます。わたしと同じように怖いと感じたことがある方も、全く理解できないという方も、ぜひご覧ください。

いないいないばあ (松谷みよ子 あかちゃんの本)

こんな人向けの記事

・いないいないばあの絵本を見て怖いと感じたことがある

・子どもがなぜかこの絵本を見て泣く

 

はじめに

 この記事は、これほどまでに人気の「いないいないばあ」を怖いと感じてしまう人がいるのはなぜなのか、怖いと思う人と思わない人の違いはなんなのか、などについて真剣に考察するものです。絵本そのものを悪く言う意図はまったくありません

 また、本記事では著作権を守るために絵本の中を写した写真などは使用しません。お手元にある絵本を開きながら読んでいただけると幸いです。

 本記事ではシリーズの名称として「松谷みよ子」の名前を出していますが、絵は瀬川康男さんによるものです。絵本自体について詳しく解説した記事が別にありますので、基礎情報を確認したい方はそちらをご覧ください。

suzume-books.hatenablog.com

怖く感じるポイントはどこ?

くまのぬいぐるみが何か考えている写真

個人的に、怖いと感じるポイントを整理してみました。もちろん人によって感じ方は異なるので、他にもポイントはあるかもしれませんし、ちっとも怖くないと感じる人もいるはずです。あくまで個人の感想であることをご理解ください

キャラクターの絵が怖い

 わたしが一番怖いと感じるキャラクターは「くまちゃん」で、次に猫の「にゃあにゃ」、名前の明かされていないねずみ、「こんこんぎつね」と続きます(のんちゃんはかわいいです)。なぜそう感じるのか考えてみました。

見開いた目に白目が多い

 にゃあにゃ・くまちゃん・ねずみの3匹は白目の領域が広く、黒目が小さいですよね。わたしが最も怖く思えるクマちゃんは、全キャラクターの中で最も広く白目があります。そのため、目を見開きながらもどこも見ていないように感じてしまうのです。

 反対に、怖さが下がるにゃあにゃは下の白目が狭く、こんこんぎつねは上下共に白目が狭くなっています。上下に白目が広いのは人間だとありえないため、ぱっと見たときに違和感を覚えぞっとしてしまうのかもしれません。

口だけが笑っていて感情が読み取れない

 目は見開かれているのに対し、くまちゃんやにゃあにゃの口がにっこり笑っているのも怖さのひとつです。そのせいで、笑いたくないのに笑わされている感というか、操られている感が出ているように思えてしまいます(わたしの場合です)。

 口が描かれていないねずみや、目も少し笑っているように感じられるこんこんぎつねはそこまで怖くありません。目と口で感情に差があるため、目の前のキャラクターがどんな感情なのか読み取れず、怖いと感じるのではないでしょうか。

細くつぶれた文字が怖い

 いないいないばあの絵本には、絵本ではあまり見ないフォントが使われています。横に潰れたような細めの文字で、明朝体に近い雰囲気です。細めの明朝体は長文を読むのに適しているため、児童書や一般の小説など文字の多い書籍に使われます。大きな文字にはあまり使いません。

 自宅にある他の絵本を複数確認したところ、0歳児向けの絵本の多くが丸ゴシックなどのゴシック体で書いてありました。ゴシック体は視認性がいいフォントで、親しみやすさもあります。(一部明朝体のものもありましたが、太めの文字でした)

 また、横に潰れている点や、線の強弱がはっきりしている点も怖く感じる原因のひとつのような気がします。試しに、2つの条件をどちらも持った「隷書体」を載せてみます。

横に潰れたような「隷書体」の画像

 表紙の「いないいないばあ」は同じ明朝体ですが、ある程度の太さがあり潰れてもいないので、あまり怖さを感じません。とはいえ中で使われているフォントが最近の絵本らしくないというだけで、繊細で読みやすい文字ではあるんですよね。

怖いと感じる目にこそ人気の秘密があった!

くまのぬいぐるみが驚いている写真

見開いたように見えるキャラクターの目ですが、実はこの目にこそ、赤ちゃんの心を惹きつける理由がありました

赤ちゃんがつい見てしまうデザインの目

 人間は遥か昔から、コミュニケーションを大切にしてきた生き物です。その名残で、生まれたばかりの赤ちゃんも、誕生後の早い時期で顔や目に注意を向けることがわかっています。赤ちゃん向けの絵本に顔が多いのはそのためです。

 いないいないばあの動物たちは、目が大きく描かれて赤ちゃんの注意を引きやすくなっています。加えて白目と黒目がはっきりしているために、赤ちゃんにとって「目が合っている」と感じやすい形なのです。

これこそが怖いと人気が両立する理由

 赤ちゃんにとって目だと認識しやすいデザインですが、その一方で、見る人によっては怖く感じてしまうようです。これこそが、「怖い」という感想と日本一の人気が両立している理由だと思います。

 同じ目であるにもかかわらず、赤ちゃんが見れば魅力的に見えて、見る人によっては怖く感じる。なんだかおもしろいですよね。

赤ちゃんは怖いと思わない?

 わたしは怖いと感じるこの絵本ですが、娘はお気に入りで何度も読んでほしがります。そこに「怖い」という感情は全くなさそうです。でも、「子どもがこの絵本を怖がる」という話を聞いたことがあります。そこで、レビュー等を調査してみました。

 その結果、絵本を怖がっている子の多くが、ある程度の年齢に達しているらしいことがわかりました。子どもは成長するにつれて、鬼のお面や目を見開いたおばけなど、恐怖の対象が増えていきます。いないいないばあの絵を怖がる子は、もしかすると見開いた目によって自分にとっての怖いものを思い出してしまうのかもしれません。

 ちなみに、生まれたばかりの赤ちゃんにとっての恐怖は、世話をしてくれる人が近くにいないことです。だから小さな赤ちゃんは、絵も文字も怖いなんて思わないのでしょうね。

他にも知ってほしい魅力がたくさん

くまのぬいぐるみがないしょ話をしている写真

 本記事では特徴的な目についての解説が多くなってしまいましたが、この絵本にはもっとたくさんの魅力が隠されています。別記事で素敵なところをたっぷりご紹介していますので、ぜひそちらも参照してください。松谷みよ子さんの熱い思いについても記載しています。

suzume-books.hatenablog.com

さいごに

 今回どうして怖いと感じたのかを徹底的に考えたことで、不思議とあまり怖いと感じなくなりました。見慣れない雰囲気に違和感があっただけで、見慣れてしまうと大丈夫なのかもしれません

 この記事を通して、「いないいないばあ」の魅力が伝わると幸いです。また、この絵本の雰囲気を怖いと感じながらも仲間を見つけられずもやもやしている方に届けばいいな……とも思います。(かつてのわたしですね)